ラピッドプロトタイピング。これまでよりも安価に早くプロトタイプ制作が行える。それを支える中心的な存在が3Dプリンターですが、技術的にもどかしい部分がたくさん存在しています。
操作のしづらさ、材料費の高さなど多々ありますが、その中心的な問題が造形にかかる時間です。従来の方法に比べて格段に早くなったとはいえ、一つのパーツを造形するのに数時間から数十時間を必要とする現在の技術では、真のラピッドプロトタイピングとは呼べません。
必要な試作品を欲しい時にすぐ作れる。手にとって確認できる。そのような世界ができて初めて3Dプリンターの真価が発揮されたといえるのではないでしょうか。
今回は3Dプリンターの2016年のトレンドについて事例を交えながら見ていきたいと思います。
1.Google 100倍早くプリントできる技術に1億ドルを投資
3Dプリントを従来の25~100倍にできる技術を開発するのはベンチャーのCarbon3D。Google Venturesが同社に行った投資は1億ドル。
今回の投資を行った理由は大きく2つ。
- Carbon3Dの技術が3Dプリンターをプロトタイピングから最終製品の製造へと置き換える可能性を持っていること
- 幅広い範囲の素材に適応できること
こちらが投資を受けたCarbon3Dが開発した3Dプリンター”Clip”で造形する様子です。
同社の技術は自動車メーカー、航空機産業、家電メーカーなどに採用されており、プロトタイピングの世界に革命を起こしつつあります。
スピードが上がることの最大の重要性は、コミュニケーションの速度が格段に上がることに他なりません。3Dプリンターを使う理由として、試作品のアイデアやメッセージをパートナーにわかりやすく伝える目的が挙げられますが、造形の速度が上がれば何度でも繰り返しコミュニケーションをはかれるようになります。
急にプレゼンをしなければならない場合や、新しいアイデアを思いついた時など、すぐにそれを形にできる環境があれば、実現の可能性も実現までの速度も大きく変わることでしょう。
URL : http://carbon3d.com/
2. Ready Box : 6倍速い FDM3Dプリンター
Carbon3Dは光造形3Dプリンターだが、Ready BoxはFDMの3Dプリンター。材料を溶かして押し出しながら造形していくタイプです。
FDMなどの用語がまだわからない方は、こちらの記事が役立ちます。
プリント速度は毎秒400mm。従来の3Dプリンターに比べたらはるかに速いのが特徴で、キックスターターで資金調達を開始後、すでに多くの出資を獲得しています。
最初に3Dプリンターを購入したアーリーアダプターが買い替えの時期に到達しており、最大の問題であるスピードを改善してくれる3Dプリンターに注目が集まっているのです。
URL : http://readybox.co/
3. 東芝:10倍速い金属3Dプリンターを開発
大手メーカーも速度の改善に力を入れています。東芝と東芝機械は経済産業者の委託事業として従来よりも10倍速くプリントできる金属3Dプリンターを開発しています。すでに試作機は完成しており、2017年移行での実用化を目指しています。
金属を使った3Dプリンターはすでに航空機産業で導入されていて、ジェットエンジンやロケットのパーツをプリンターで制作するケースもでてきています。
4. Auroa lab : 100倍速く金属を3Dプリントする技術
オーストラリアのスタートアップ「Auroa lab」が開発している金属3Dプリンターは従来のものより100倍早くプリントできることが特徴で、この技術にはNASAも注目しているようです。
残念ながらキックスターターでの資金調達は失敗してしまいましたが、格安かつ高速のAurolabは、SLS3Dプリンターの世界に革命を起こす可能性を持っています。
URL : http://auroralabs3d.com/
速度が3Dプリントの概念を覆す
3Dプリンターはより速く、より綺麗に進化しています。必要なものをすぐに作れる。アイデアをすぐに形にして共有する。修正と確認のスピードが上がることで、試作品制作の時間は段違いに上がることでしょう。
「速度」に関する3Dプリンターのニュースが増えてきています。2016年は3Dプリンターのスピード進化の1年となりそうです。
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